おきばしょ

記録です。

チェルノブイリ HBOドラマ

HBOドラマのチェルノブイリを観ました。

チェルノブイリ

ものすごいドラマがあるぞというのはずいぶん前から存じ上げていたのですが、観る機会を逃しやっと観ました。まさかここまでとは思わず一気に5話を観てすぐにブログを書く羽目に…耐えきれず感情がむき出しになっているかもしれませんが、お付き合いください。

 

どこから突っ込めば良いのか…

率直に、完成度が馬鹿高いドラマだと感じました。

 

チェルノブイリ原子力発電所事故は1986年4月26日午前1時23分に旧ソ連の構成国、ウクライナソビエト社会主義共和国のチェルノブイリ原子力発電所4号炉で起きた原子力事故です。この事件を題材にして2019年にHBOとSky UKがドラマ「チェルノブイリ」を制作しました。

この作品はリミテッドシリーズとして、第71回エミー賞リミテッドシリーズ部門作品賞、監督賞、脚本賞を受賞したようです。加えて主演のジャレット・ハリスが男優賞、エミリー・ワトソン助演女優賞ステラン・スカルスガルド助演男優賞ノミネートされていますね。全体的にとても高い評価を受けているドラマシリーズです。

 

 制作について

監督はヨハン・レンク

彼はスウェーデンの監督なんですね。ブレイキングバットやウォーキング・テッドドラマ等で名前は拝見していましたが、そこまで意識することはなかったのでそうなのか〜という印象しかなかったというのが正直なところでした。そもそもこの方MVとCMが得意な監督なんですね。このドラマを制作したことによって評価が変わってくるのではないでしょうか。今後も期待しています。

 

音響はヒドゥル・グドナドッティル

ドラマを観始めてからほんの3分ほどで、この音楽の感じどこかで触れたことあるぞ…と思っていたらまさかの「ボーダーライン」「ジョーカー」手がけてた彼女でした。彼女や彼女の師匠にあたる映画音楽作曲家ヨハン・ヨハンソンの音楽は、静かに迫ってくる恐怖やこれから起こることを予兆させるような、決して派手ではないけれど嫌な感じを表現する技術に長けているなあと心底思います。

ボーダーラインなんかはメキシコ国境を越えるあの緊迫したシーンで漏らしそうになったし緊迫した映像を静かに恐怖に落とし込むそいいう表現ができる作曲家だと思うのです。好きな作曲家/音楽家なので今後の活躍をとても楽しみにしています。

 

役者陣はジャレッド・ハリスステラン・スカルスガルドエミリー・ワトソン、ポール・リッター、ラルフ・アイネソンらの英国俳優の名優勢揃いという布陣。バリー・コーガンも出演していましたね。

イギリス俳優のある一定の年を超えた方々についてはハリーポッター等のファンタジー映画で見かけることが多いので馴染みがあるのかな。個人的に。

ジャレット・ハリスは色々なところでお見かけしますが、大好きなドラマシリーズ「フリンジ」でいい役やっているのでね。最高〜!と思って観ていました。チェルノブイリを観始めるまで出演していることも全く知らなかったのですが。

 

全体的にカメラワークの切り取り方も、問題提起の仕方も次回に続く終わり方も、もちろん役者陣の演技(それはそうメインキャストが並々ならぬキャストなので)何もかも洗練されていて本当に完成度が高いというのが印象的でした。雑な作りではないということ。

特に映像については、リアルだなあと終始感じていましたが、調べてみたところチェルノブイリと同型のリトアニア閉鎖原発で撮影、原発以外の荒廃した遊園地や団地のような住まいは写真から映像技術によって撮影されているのですね。納得。

さらに場所だけでなく被害者の衰弱していく様子や被曝の様子について、これは………と目を背けたくなるような映像でした。どこまでも「リアル」を追い求めていくドラマだなと実感したのもこれらの映像からです。極めて膨大な放射線を一気に浴びるとああなるのか…と衝撃的でした。

 

内容について

チェルノブイリ原発事故はもちろん知っていましたが、特段意識せずむしろ少し遠い歴史のことであると認識していました。そもそもソ連の存在自体、私の中の時間感覚ではバグっていてだいぶ昔のことのように認識しているのでチェルノブイリ事件もその感覚ですね。アップデートせねば。

 この事件について原因や詳細など全く知らず(それも今を生きる人間としてどうかと思うが)最悪の原発事故が起こったとしか考えていなかったのです。
そういう中での主人公レガソフの説明の台詞は妙にわかりやすくて驚きました。無知の人間に理解させようという気迫が感じられる台詞回しのように感じます。実際、事件が起こった際も対処するのは無知だった幹部なのでそうなのかなとも思いましたが。とにかく彼の説明はとてもわかりやすかったです。

 もともとソ連は犠牲者数を31名としておりそれは今も変わっていないようなのですが、このドラマでは完全無視していました。少し笑ってしまった。でも実際そうだったのかなと思うとやるせない気持ちになります。映画、ドラマともに人の主観が入ってしまったらもうそれはフィクションになるんですけどね。我々はそれを踏まえて楽しんだり感情移入したりせねばなりません。

 

セリフについて

入ってくる情報量が膨大すぎてセリフまで覚える余力がなかったのですが、以下の2つのセリフは特に印象に残っています。

 

・「ウソの代償とは?」

 1話のはじめの部分と5話のエンディングに映し出されるの台詞です。
まさしくこのドラマの全てを語っていると言っても過言ではないと思います。

嘘が重なり合いこのような悲劇が生まれた。このドラマの全てというか、この世の全てですよね。
「ウソ」と「真実」

真実はいつもそこに横たわっていることを常に意識しなくてはなりません。

 

・「1時間ごとに広島の原爆の約二倍の放射線を出している」

これもまた違った意味で印象に残るセリフでした。 理解しやすい。

 

感想 

上記にも述べましたが、一度人の手で出された作品はたとえそれがどんなに現実に寄り添っていても、すべからくフィクションです。

そこに甘えて鵜呑みにしたり、監督や製作側の主観が少なからず入っているんだということを見ないふりをしてしまうのは、映像技術が発達、SNSが発達している現代において、絶対にしてはいけないことだと思っています。
最近はその大切な部分を理解できていない人間が多いような印象を受けます。大人も子供もお年寄りも若い人間も。

「フィクション」の作品の中で発せられているメッセージをどのように受け取るか。それが問題なのです。そこが映像娯楽の楽しいところかなと個人的に思っています。ドラマ「チェルノブイリ」は非常にメッセージ性も高く考えさせられ、歴史を知るきっかけを作ってくれるそんなドラマでした。

もっと早く観ていれば…。

 

観終わった後ため息と感動の感情に揺さぶられて情緒がおかしなことになっていました。長くなってしまいましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。