おきばしょ

記録です。

ゆきゆきて、神軍

ゆきゆきて、神軍 観ました。

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父親からHuluにドキュメンタリー入ってる!と言われたことがきっかけでした。「これが配信で見ることができるとは思わなかった…」と言っていたのでどんなものなんだ?と見始めたらこれが、まあ面白い。なんでこんなに面白いのか。いや面白いと言ってはいけない類の内容なのですが、ドキュメンタリーとは思えないほどのキャラクターの濃さと展開、話の持っていきかただとか、1つの創られた映画を観ているようでした。

 

・あらすじ

兵庫県神戸市兵庫区荒田町。色褪せたジャンパーを着た中年男が、シャッターを上げていた。看板にはキケンな(「キケンな」に傍点)メッセージがびっしり、大書されている。バッテリー・中古車修理店店長にして“天皇にパチンコ玉を撃った男”奥崎謙三の登場である。兵庫県養父町。太田垣家の婚礼、媒酌人を務める奥崎が、居並ぶ親類縁者・長老達の前で祝辞を述べる。「花婿ならびに媒酌人、共に反体制活動をした前科者であるがゆえに実現した、類稀なる結婚式でございます」天皇誕生日当日。「神軍平等兵奥崎謙三」「田中角栄を殺すために記す」「ヤマザキ天皇を撃て!」「捨身即救身」・・・・・・奥崎の物騒な宣伝車は公安によって行く手を阻まれる。車に立てこもって演説をぶつ奥崎。「自宅屋上に独居房を作ろう」。そう思い付いた奥崎は、その実寸を測るため、神戸拘置所に向かう。静止する職員を罵倒する奥崎。「ロボットみたいな顔しやがって!」「人間ならば腹立ててみよ!」喪服の黒いスーツ姿に正装した奥崎は、ニューギニアで亡くなった元独立工第36連隊の戦友達の慰霊に出発する。“神軍”の旗をなびかせて疾駆する街宣車。広島・江田島町。同年兵・島本一等兵の墓前で、島本の母・イセコをニューギニアにお連れすると約束する奥崎。兵庫県浜坂町に、ジャングルで餓死した山崎上等兵、次いで南淡町に、毒矢で狂死した田中軍曹、と奥崎の慰霊行脚は続く。終戦から23日後、36連隊ウェワク残留隊内で隊長・古清水による2名の部下銃殺事件が起こった。その真相究明のため奥崎は、かつての上官たちの家を次々、アポなしで襲撃してゆく。その追求の果てに“究極の禁忌(タブー)”が日々の営みの一部となっていた戦場の狂気が、生々しく証言されることになる――。

 

あらすじも何もあるかいと思うのですが一応。

 

・制作陣

監督は原一男です。

ドキュメンタリー映画をあまり見ることがないのでどのように書いていこうか考えていたのですが、小難しいことは考えずに感想だけ書いていこうと思います。撮影技術というよりも内容ありきの作品だと思うので。

 

・感想

はじめの結婚式の媒酌人のシーンから面白くて笑ってしまいました。はじめは軽い気持ちでなんだこの人は…と思って見ていたのですが、だんだんと待て待てとなりました。公開当時バブルだったこともあって若者たちが奥崎の啖呵や物言いにゲラゲラ笑っていたとありましたが、私は真面目なつまらない人間なので色々考えさせられてしまいました。

結局奥崎の気持ちの強さがこのドキュメンタリー作品の核なんですよね。
その気持ちの強さは戦争からきていると。しかもただの戦争ではなくて過酷な戦地での従軍経験。戦争を扱った作品はこれまでたくさん触れてきましたが、このドキュメンタリー映画も一つの戦争映画だといえるのではないでしょうか。戦争前後で奥崎の考えにどのような変化があったかなどわからないですが、戦争という魔物が生み出した産物の一つに奥崎のような人間がたくさんいると思うと本当にやるせない。

当時は戦後30年少しなので今と感覚が違いすぎるなというのも感覚として持ちました。戦争についての記憶が新しすぎる。「俺が命令を出した」「仕方なかった」「引き金を引いた」とそこらにいそうなおじちゃんの口から出てくる衝撃たるや。これを抱えて残りの人生を生きていくというのは…とても考えたくないですね。

戦争で生きるか死ぬか、殺すか殺されるかの経験をした人間が掲げる思想としての右翼と極めて平和な時代を生きている人間が掲げる思想には、どう考えても隔たりがある。驚いたのは「靖国神社」という言葉が出てきただけで掴みかかって殴り倒したこと。参拝がどうのこうのの次元ではないんですよね…。

う〜ん、もっと知らなくてはいけないことがたくさんあるな…と考えさせられるきっかけになりました。

色々考えはあるとは思いますが、極めて平和な時代に生きている私たちは誰も奥崎に対して否定的なこと、嘲笑はできないのではないかな。見ていて切なくなってしまった。