おきばしょ

記録です。

深呼吸の必要/長田弘

久し振りに読み返しました。

この本は子共から大人になった時の境界線についてかかれています。
大人になったのはあの時だったのかもしれない、とその瞬間について。

みんなが必ず持っている子供時代。
大人になった瞬間はいつかってそんなことは覚えていません。
この本にはそうだったかもしれない「区切り」が描かれています。

…つまり、きみのことは、きみがきめなければならないのだった。きみのほかぶは。きみなんて人間はどこきみなんて人間はどこにもいない。きみは何が好きで、何がきらいか。きみは何をしないで、何をするのか。どんな人間になってゆくのか。そういうきみについてのことが、何もかも、本当は何一つ決められてもいなかったのだ。

 そうしてきみは、きみについての全部のことを自分で決めなくちゃならなくなって行ったのだった。つまり、ほかの誰にも代わってもらえない一人の自分に、きみはなって行った。きみはほかの誰にもならなかった。好きだろうが、きらいだろうが、きみという一人の人間にしかなれなかった。そうと知った時、その時だったんだ。そのとき、きみはもう、一人の子どもじゃなくて、一人のおとなになってたんだ。

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おとなとは子どもとは何か。
普段考えないことを、考えないからこそ「おとな」なのだろうけど、ふと立ち止まる機会をくれる詩集です。詩というのは、行間を読ませるものだと思っていますが、
長田弘の作品と感性が、自分の中にある漠然とした隙間をうまい具合にうめてくれます。その心地良さが切なくもあり、ハッと大切なものを押さえてくれるのです。

余裕のないおとなにはなりたくないなあ。